ある日、猫ちゃんとくつろいでいて、お腹を撫でたときのことです。
「あれ? 前はもっと毛があった気がする……」
地肌が見えるほどではないけれど、確かに毛が薄い。短くて、まばらで、触ると少しチクチクする。
——猫のかゆみシリーズ第2回は、そんな「気づいたら薄かった」というお話です。
その薄さ、静かに進んでいきます
最初は「気のせいかな」「年のせいかな」と思うくらいの変化です。
でも数週間、数か月とたつうちに、薄い範囲が少しずつ広がっていく。気づけば毛玉を吐く回数も増えている。
猫ちゃんのお腹の毛が薄くなるとき、その多くは「舐めすぎ」が関係しています。
人の前では、舐めないのです
猫ちゃんは、かゆい場所を舐めて我慢する動物です。
しかも上手に隠します。飼い主さんの前では知らん顔をして、夜中や留守番中など、誰も見ていないときにこっそり舐めていることが少なくありません。
だから飼い主さんが気づくのは、だいたい「結果」のほう。毛が薄くなって、初めて「あれ?」となるのです。
舐め続けた毛は、根元から抜けるのではなく、途中で切れます。だから短い毛がチクチクと残り、飲み込んだ毛の分だけ毛玉も増えます。「抜け毛」ではなく「舐め壊し」——ここが見分けるポイントです。
舐めるのには、理由があります
お腹を舐めるのは、癖でも、飼い主さんを困らせるためでもありません。多くの場合、その奥に「かゆみ」があります。
原因の候補は、ノミ、感染、食物、環境(アトピー)。診察では、この順番で1つずつ確かめていきます(総論と第3回【原因編】で詳しく書きました)。
「ストレスのせい」と決めつけるのは、いちばん最後です。まず体の方を確かめてあげてください。
お腹以外にも、こんな形で出ることがあります。
- 背中から首にかけて、撫でるとザラザラする小さなぶつぶつ(粟粒性皮膚炎)
- お腹や内股の、赤く盛り上がったただれ(好酸球性肉芽腫群)
かゆみとは限らないこともあります
もう1つ、大切なことがあります。下のお腹ばかりを気にして舐めているとき、膀胱炎など、おしっこのトラブルのことがあるのです。お腹の下のほうには膀胱があります。そこの痛みや違和感を、舐めることで紛らわせようとしているのかもしれません。
こんな様子が一緒にあったら、皮膚より先におしっこの診察をおすすめします。
- トイレに行く回数が増えた、でも少ししか出ない
- 尿に血が混じる
- トイレ以外で粗相をするようになった
お腹の毛の薄さに気づいたら、トイレの様子も思い出してみてください。
気づいたら、してほしいこと
- 写真を撮っておく:今日の状態を残しておくと、広がっているかどうかが比べられます。診察でもとても参考になります
- 叱らない:舐めるのは、我慢している最中の行動です
- ノミ予防は続ける:室内飼いでも、ノミはやってきます
- もちろん、獣医さんに診てもらう:気になったら、それが一番の近道です
そして、薄さが広がってきた、皮膚が赤い、毛玉が増えた——そんなときは、早めに診せてください。
「様子を見すぎてしまったかも」という心配は要りません。お腹の毛の薄さは、体からの静かなサイン。気づいてあげられたこと自体が、第一歩です。
(猫のかゆみシリーズ:総論「猫ちゃんの「舐めすぎ」は、かゆみのサインかもしれません」、第1回【顔・耳編】「おでこのハゲ、耳のぶつぶつ、放置してませんか?」、第3回【原因編】「アレルギー検査で陽性ならアレルギー?」もあわせてご覧ください)